タヌキモ属 - 水辺の希少生物たち −タヌキモからゲンゴロウまで−

イトタヌキモ,ミカワタヌキモ

2005.9イトタヌキモ1.jpg2005.9イトタヌキモ2.jpg

イトタヌキモ(ミカワタヌキモ)  Utricularia exoleta
タヌキモ科タヌキモ属
環境省 絶滅危惧U類
国内分布:東海、近畿、九州、沖縄



貧栄養のため池などに生育する。浮遊性または湿生で、茎は細く盛んに分枝して絡み合いマット状になる。水中葉、地中葉ともにわずかな捕虫嚢をつける。
夏〜秋に5cm前後の花茎を水面上に出し黄色で全幅3〜4mmの花を咲かせる。湿地上では冬を越せず一年草となるが、水中では植物体の一部が浮遊したまま越冬する。
本種とよく似るが、全幅約10mmの大型の花を咲かせるオオバナイトタヌキモ Utricularia gibba が海外から入ってきており、一部が逸出し野生化しているようである。
両種の見分け方は、オオバナイトタヌキモの花の大きさがイトタヌキモの2倍〜3倍以上大きくなるため容易であるが、開花時以外では区別が難しい。

オオバナイトタヌキモとの関係について、Taylor(1989)は両種を同種とみなし、本種を Utricularia gibba L.subsp. exoleta と命名したが、花の大きさが明らかに異なることから、角野(1994)はこれを認めず、現在は別種とされている。

オオバナイトタヌキモ.jpgオオバナイトタヌキモの花

参考文献

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タヌキモのレッドリスト改訂

8月3日に、環境省より絶滅のおそれがある国内の野生生物をまとめた「レッドリスト」の改訂版が公表された。改訂されたのは全10分類のうち哺乳類、魚類、昆虫、植物など6分類。
食虫植物についても、今回の改訂で一部変更がなされたので紹介する。

絶滅危惧TA類
ムジナモ Aldrovanda vesiculosa

絶滅危惧TB類
フサタヌキモ Utricularia dimorphantha
ヒメミミカキグサ Utricularia minutissima

絶滅危惧U類
ナガバノモウセンゴケ Drosera anglica
ナガバノイシモチソウ Drosera indica
コウシンソウ Pinguicula ramose
ノタヌキモ Utricularia aurea
ミカワタヌキモ Utricularia exoleta
ヤチコタヌキモ Utricularia ochroleuca

準絶滅危惧
イシモチソウ Drosera peltata var. nipponica
イヌタヌキモ Utricularia australis
オオタヌキモ Utricularia macrorhiza
ヒメタヌキモ Utricularia minor
ムラサキミミカキグサ Utricularia uliginosa
タヌキモ Utricularia vulgaris var. japonica


タヌキモ類に関していえば、従来、混同されていたタヌキモとイヌタヌキモの関係が
遺伝解析により由来が明らかとなったため、タヌキモの花粉親であるオオタヌキモ、
種子親であるイヌタヌキモが加わった。
また、前回のレッドデータブックでは、タヌキモUtricularia australisとされて
いたが、今回の改訂によりイヌタヌキモがUtricularia australisとなり、タヌキモは
Utricularia vulgaris var. japonicaと正式に区別された。

その他、ノタヌキモが新たにレッドリストに加わったほか、ランクの変更が行われている。
フサタヌキモ   TA類 → TB類
ノタヌキモ   ランク外 → U類
ミカワタヌキモ  TB類 → U類
ヤチコタヌキモ  TB類 → U類
タヌキモ     U 類 → 準絶滅危惧
イヌタヌキモ  ランク外 → 準絶滅危惧
オオタヌキモ  ランク外 → 準絶滅危惧

ヒメタヌキモ

ヒメタヌキモ1.jpgヒメタヌキモ2.jpg

ヒメタヌキモ Utricularia minor
環境省 絶滅危惧U類
国内分布 日本全国



全国の貧栄養の湖沼やため池、湿原などに生育する多年草。
茎は長さ10〜30cm程度。水中茎と地中に埋もれる無色の地中茎とがあり、水中茎につく補虫嚢よりも大きな目立つ補虫嚢をつける。
葉はまばらで互生、細裂片が二叉状に分枝し、長さは5〜15mm程度である。
花期は8〜9月であり、花茎は長さ5〜25cm程度で、淡黄色の花を咲かせるが、開花しないことが多い。
直径7mm以下の殖芽を形成して越冬する。

ヒメタヌキモ茎.jpg
水中茎と地中茎につく補虫嚢

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ノタヌキモ

ノタヌキモ2.jpgノタヌキモ葉.jpg

ノタヌキモ Utricularia aurea
環境省 絶滅危惧U類
国内分布 本州(関東以西)、四国、九州



本州以西の暖地で中栄養の湖沼、ため池などに浮遊して生育する。他種が多年草であるのに対して、本種は一年草で種子で越冬する(東南アジア等の亜熱帯地域では多年生)。
茎は長さ30〜50cmだが、1m以上に達することもある。
葉は基部から3本の枝に分かれ(タヌキモ、イヌタヌキモは基部から2本)、それぞれの葉は円錐状に枝分かれしており、他種にはない特徴である。葉全体の長さは3〜8cm、多数の捕虫嚢が付く。
花期は7〜10月であり、花茎は長さ7〜20cm程度で、淡黄色の花を咲かせる。自家受粉によって結実し、果実は直径4〜5mm程度である。

ノタヌキモ葉分岐.jpgノタヌキモ 葉の分枝(茎から3本の枝に分かれる)
チョウシタヌキモ葉分岐.jpgタヌキモ 葉の分枝(茎から2本の枝に分かれる)

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チョウシタヌキモ

KIF_2977チョウシタヌキモ花.jpgKIF_2966チョウシタヌキモ.jpg

チョウシタヌキモ  Utricularia australis form fixa
タヌキモ科タヌキモ属
国内分布:太平洋岸、九州



タヌキモの型の一つであり、浮遊性のタヌキモに対し、本種は沈水生である。しかし、タヌキモのシノニムとする説もあり、正式な見解が待たれる。本種の殖芽を見ると楕円形のイヌタヌキモと同様な殖芽であることから、イヌタヌキモの地域変種なのかもしれない。
茎は細く、長さは20cm程度、分枝が多く、夏ごろから各先端に不定芽(増芽)を多出する。葉は小型で不揃いである。
KIF_2974銚子生息環境.jpg本種の生息環境
チョウシタヌキモ殖芽3.jpg殖芽

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ヤチコタヌキモ

ヤチコタヌキモ.jpgヤチコタヌキモ1.jpg
ヤチコタヌキモ Utricularia ochroleuca
環境省 絶滅危惧U類
国内分布 北海道、東北〜本州の一部



コタヌキモに類似し、同一産地からも確認されている。
コタヌキモと同様、水中茎と地中茎があるが、コタヌキモとは異なり水中茎の葉に捕虫嚢をつける。葉の最終裂片は糸状で細長く、先端が尖り、歯状突起が顕著であることから、コタヌキモとは識別できる。
鮮黄色または橙黄色の花を咲かせる。

ヤチコタヌキモ2.jpg葉の先端が尖る

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コタヌキモ

コタヌキモ1.jpg
コタヌキモ Utricularia intermedia
国内分布 北海道、本州、九州の一部



湿原や腐食栄養質の湖沼の浅水域に生育する多年草。
茎は長さ10〜20cm程度で、まばらに分枝する。緑色の水中茎の他、地中に埋もれる無色の地中茎がある。水中茎の葉には、捕虫嚢が全くつかないか、1〜2個であるのに対して、地中茎には多くの捕虫嚢がつく。
葉は細裂片に分枝し、扇状に広がり、重なり合う。最終裂片は針状または細板状で先端がやや鈍頭である。ヤチコタヌキモと良く似ているが、葉の先端で見分けられる。
花期は6〜9月で、花茎は長さ5〜20cm程度。鮮黄色の花を咲かせる。
直径2〜5mmの楕円状の殖芽を形成して越冬する。
コタヌキモ2.jpg葉の先端がやや鈍頭

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オオタヌキモ

オオタヌキモ1KIF_1782.jpgオオタヌキモ2KIF_1238.jpg

オオタヌキモ Utricularia machrorhiza
タヌキモ科タヌキモ属
環境省 準絶滅危惧
国内分布:北海道



北海道の泥炭湿地などに分布している多年生、浮遊性の種類である。寒地性で越冬芽をつくる。主茎の長さは1m以上と大型になる。葉は2面に別れ、さらに付け根で大小2面に別れる。最終裂片には歯状突起が目立たない。葉上には大小様々な捕虫嚢を多数つける。

最近の研究では、前述したタヌキモの花粉親であることが明らかになってきており、種子親であるイヌタヌキモとの自然交雑により、雑種第一代としてタヌキモが生まれ、無性生殖によって増殖したようである。ただし、オオタヌキモとイヌタヌキモは同所的に生息していないことから、過去の氷期、間氷期を繰り返していた気候変動の激しかった時期に偶然、両者が出会ったことでタヌキモが生まれ、切れ藻や殖芽により増殖し、水鳥などによる長距離散布が行われ、全国に広まったと考えられている。

F1雑種とその両親種の異所的分布パターンと遺伝構造 -水生植物タヌキモ類を例として-
(第52回日本生態学会大会)
http://www.jstage.jst.go.jp/article/esj/ESJ52/0/ESJ52_769/_article/-char/ja/

参考文献

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イヌタヌキモ

KIF_2761タヌキモの花.jpg2005.9タヌキモ.jpg

イヌタヌキモ
Utricularia australis /Utricularia australis form tenuicaulis
タヌキモ科タヌキモ属
環境省 準絶滅危惧種
国内分布:日本全国



全国の湖沼、ため池、水田などに生育し、多年生、浮遊性の種類である。従来、タヌキモとイヌタヌキモは混同されてきたが、タヌキモは、イヌタヌキモと北海道・東北地方に分布しているオオタヌキモとの自然交雑種であるという説が発表されている。

水生植物タヌキモ類における不稔雑種の形成と維持(第23回進化植物学研究会)
http://hosho.ees.hokudai.ac.jp/seminar/2003/shinka/eb2004.pdf

茎は長く、1mを超えることもあり、基部で2本の枝に分かれ、さらに数回分枝して、各裂片は糸状になる。最終裂片には歯状突起が目立つ。条件にもよるが、多数の捕虫嚢をつける。花期は7〜9月であり、黄色い花を咲かせる。晩秋に殖芽が形成され、水中で越冬するが、この殖芽の形状で、ほぼ球形の殖芽を形成するのがタヌキモ、長楕円形の殖芽を形成するのがイヌタヌキモである。殖芽の形状を見れば、両者の違いは明らかである。
イヌタヌキモ殖芽.jpgイヌタヌキモの殖芽。タヌキモはここが球形になる。

参考文献

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タヌキモ属とは

生態はきわめて多様に分化したグループであるが、大きく分けると湿生のミミカキグサ類水生のタヌキモ類とがある。
根はなく、水中、泥中などに広がった糸状の葉、または糸状の裂片に分枝した葉に捕虫嚢をつける。捕虫嚢には内側に開く弁があり、ミジンコのような小型の動物が近づくと弁が開き、それらを吸い込み、弁が閉じる。
世界中に約210種が知られており、日本には、4種のミミカキグサ類と9種のタヌキモ類が知られている。

タヌキモ属をまとめるにあたり、以下の文献を参考にした。
・日本水草図鑑  文一総合出版 角野康郎著
・日本水生植物図鑑  北隆館 大滝末男・石戸忠著
・ため池と水田の生き物図鑑 植物編  トンボ出版 浜島繁隆・須賀瑛文著
・食虫植物研究会会誌48(1)15項〜17項  小宮定志
・日本の野生植物 草本V  平凡社

●タヌキモの仲間

 フサタヌキモ Utricularia dimorphantha 

 タヌキモ/イヌタヌキモ
 Utricularia australis Utricularia australis form tenuicaulis 


 チョウシタヌキモ  Utricularia australis form fixa 

 イトタヌキモ(ミカワタヌキモ)  Utricularia exoleta 

 オオタヌキモ Utricularia machrorhiza 

 コタヌキモ Utricularia intermedia 

 ヤチコタヌキモ Utricularia ochroleuca 

 ヒメタヌキモ Utricularia minor  

 ノタヌキモ Utricularia aurea 


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フサタヌキモ

DSCF0002.JPGKIF_1868.JPG

フサタヌキモ
 Utricularia dimorphantha
タヌキモ科タヌキモ属
環境省 絶滅危惧TB類
国内分布:東北、中部、近畿、中国地方の一部(日本固有種)



きわめて稀な多年生の浮遊性のタヌキモである。多くの産地で絶滅し、絶滅寸前の状態にある。
茎は長さ30〜80cmでややまばらに分枝。葉は長さ2〜6cmで多数の細裂片に分かれ、茎葉の感触は、房のように柔らかい。
捕虫嚢は、ごく少数しか付かない。花はほとんど閉鎖花であり、開放花は、ほとんど見られないようである。晩秋に殖芽が形成され、水中で越冬する。

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